新渡戸稲造の武士道

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補足

今、サムライという言葉が、日本のみならず世界中で使われている。

頼もしいし、面白い。

日本人として、うれしいことでもある。

 

思想や哲学というものは、本来、その時々の社会の風潮や状況と共鳴しなければ世の中に出てこないものであるが、「サムライ」や「ニンジャ」という言葉が、その概念に関わらず、あるいは思想や哲学云々ということでもなく広く知れ渡っているということは、日本の固有性を証明しつつ、世界で最も人気があり不思議な国である日本の伝統文化に間違いはないということを裏付けているとは言えまいか。

国内においても、太平洋戦争で味わった辛酸が抜け始めた戦後50年ころだろうか、それまでくすぶっていた大東亜戦争肯定論が突如、機運を増し、様々な戦後問題を提起しつつ、本来の日本を取り戻そうとした意識が市井にまで広がっていったが、サムライという言葉が世に流れ始めたのもこの頃からではなかろうか。損得なしの正義心が風となり、草莽に隠れた多くの微臣を覚醒させ、相対する過去の正常状態を求めよと内知に火をつけた結果、複利として日本人の本質が思い出されたのであろう。

が、しかし。

その昔は実在したが、近代化と共に姿を隠し、概念として残ったが、その姿は明らかに虚構化されたものである。

一民族の精神性を換言するに、洋の東西を問わずここまで普遍的に知らしめられた言葉は無いのだが、釈迦の『一音を以って人は種々に聞く』との言葉のごとく、適宜よく使われる「サムライ」という言葉がもつ背景や意味、思想や哲学は、その時々に使われる場面での利用価値に隠されてしまっているようだ。

時代は、本物のサムライを求めている。

現代社会に能う真実として、サムライ人を深めよう。

 

新渡戸稲造の「武士道」

 

ちなみに、「我々はサムライを祖にもつ民族である」という自覚を日本人に植えつけた(この場合は逆輸入と言えるが)ものは、初版刊行より数えて百数十年経過した今でも人気の高い新渡戸稲造の-武士道-であるとして、間違いないだろう。

恐露病(ロシアを恐れる病気)という流行言葉がでる一方、露国打つべしの国論が沸騰していた頃である。
日本がロシアを相手に戦争をする。
と、この、小人が巨漢に向け戦いを挑むとした笑い話のような事実に対し世界中が注目した。
ロシアを恐れる、つまり恐露病は、日本のみならず世界中に蔓延していたからだ。

マカーキ(猿)と、公文書においてでも日本をそう表現していたロシアのニコライ二世は、

『私は戦争を欲しない』

だから戦争はありえないとしていたが、ロシアによる極東戦略として中国と朝鮮への侵略が予定されるなか、その先にいる小国が無謀にも逆らうとした形にて形成されたる日露関係には、いささか穏便になれず

なるほど日本はロシアのいうことを聞かない。
中国もロシアのいいなりにならない。
それはロシアが彼ら東洋の国々に対してあまりにも遠慮がちな態度を示してきたからである。
彼らに我々の命令を聞かせる手段は一つしかない。
威圧である。

と言った。

戦争ではなく威圧である。と、この高みに高まった巨大国の皇帝は、まさかその首がこの小国に締め上げられることも知らずにこう宣い、戦争に向けて腰を上げたのだ。

国力の限界が、開戦前より見えていた。

『日本は、ギリギリまで戦ってすぐ、第三国の仲裁を依頼する』
それしか考えが浮かばなかった。
そして、その頃の頼みの綱であるアメリカ(国民)に日本を知ってもらおうとした意で、知日家ないし親日家工作をすすめたのだ。

小泉八雲の著書群が既に圧倒的な人気を得ていたこともあり、便乗するべく、武士道と、イーストレーキの『勇敢な日本』を発行し、期待した。

奇跡的に戦争には勝った。

が、アメリカの気を引こうとし、へつらった新渡戸は、こともあろうに「日本人にとっての朱子学の未来形に能うのはキリスト教である」と言い、なおも「日本の土中に滅したサムライ精神は、キリスト教への衣替えにより蘇る」と語った。

 

彼の政治的立場を以って保身による米国迎合であると観て非難せざるを得ないが、それにしても残念だ。

彼は、時間軸を逆行して自らの心情を過去に投射し、たまたまそこにあった朱子学と陽明学を適宜に利用しようと簡便に抜粋したのだろう。

現代人は間違えているようだが、新渡戸稲造はサムライではない。
陽明学を知らず(行わず)して陽明学を語り、朱子学を知らず(行わず)して朱子学を語った。
ユダヤに魂を売ったことで五千円札に刻まれたが、彼の風の読み方を見ても、典型的な政治家であることが伺える。

(私は新渡戸の子孫とも縁があったのだが、その経緯を鑑みるに遠慮は要らないと判断している)

 

ちなみに、新渡戸稲造の書籍「武士道」がアメリカでベストセラーになったのは、その文間に漂う日本人の香味がアメリカ国民の琴線に触れたからに違いなく、あるいは、今だ多くの日本人がこの著書に入り込むのもこの香味ほしさに違いない。
日本をなくした日本において、いま、遠い日本人を懐かしむ。
思想の相対性としてアメリカにおける対日だったものが、現日本においての対過去となるのが残念だ。

更に、余談だが
日露戦争の頃、東郷平八郎提督が、社会主義先進国であるフランスで『社会主義についてどう思われますか』と新聞記者に聞かれたことがある。
(この頃ヨーロッパでは随所にて社会主義思想革命論が沸騰していた)
社会主義思想について明瞭なる認識がなかった東郷は、すがさず側近に社会主義の何たるかを問い、『平等主義のことです』と聞くと

人々を平等に扱うとした思想は大変よろしいと思う。
が、日本人はその上を行き、つまり他人のために自分を犠牲にするとしたサムライ精神により生きている。
だから日本人の方が一枚上手じゃ!
と言ったという。

運がいいから。
という理由で海軍総司令長官に抜擢された男である。
明治天皇も納得するほどの豪傑であるこの男は、しかし常の真は貫いていた。
とっさに出た言葉であろうとも、魂は、通っている。

文献・・・
坂の上の雲 司馬遼太郎 著  文藝春秋 発行
日本の歴史 北山茂夫  著  中央公論社 発行
武士道   新渡戸稲造 著  奈良本辰也 訳・解説 三笠書房 発行

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